めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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旦過市場の火災

福岡県のマイナー地域で北九州市というところがある。博多に隠れて見えなくなっているが、かつては港湾を擁して朝鮮半島や大陸への船便の出発地としての拠点だったため、全国紙の新聞社が西部本社と称して拠点を置いたり、国鉄の九州地区の支社機能も置かれていたような地域である。今は主要産業が衰退して、高齢化もあって人口が100万人を切っており政令指定都市として機能しなくなりつつある。

そんな北九州市の玄関口は小倉駅だが、地域住民にとっての中心地とは少し離れている。中心地はアーケードのある商店街を抜けて市役所との通りが合流する小倉駅から南に少し行った地域である。そこに旦過市場という区域がある。水路のような川の支流が流れているところに足場が出ていて、そこをメインとして周辺で戦後の闇市をそのまま店舗にしたような商店街が形成されている。昔は水路から船で水揚げしたのかもしれないが、魚屋や水産加工品のほか青果類や肉などのほか、惣菜店など食料品を中心に扱う店舗がほとんどである。市場と書かれているが、仲買市場ではなく消費者に小売りする店の集まりである。

旦過市場は現在の建築基準から言うとバラック同然の建物が密集していて築年数が相当経過しており、災害時の大規模な被災も予想されていたことから再開発の話が20年近く前からあった。特に、表通りからひときわ目立つ「丸和」というセルフサービスのスーパーの元祖の本店があり、かねてから建て替えなどの話があったが、途中火災などを起こしても結局古い状態のままで再開発は実現せずに今に至っていた。同じような状況だった小倉駅南口の区画は再開発ビルに建て替えられている。

そんな矢先に春先に火災が起き、それがひと段落した夏に再度火災となった。巻き沿いを食らって文化不毛の北九州市では珍しい名画座系の「昭和館」という映画館に延焼して、恐らくこのまま再開や再出発することなく廃業してしまうのではないかと思われる。焼けたのは映画館の裏側の店舗が密集しているところで、ほぼ川沿いの店を除くと旦過市場の区画がきれいに焼け落ちたような状態になっている。

2回目の火災の原因は飲食店でてんぷら油からの出火だという。なぜか油処理剤を入れて加熱、出火したら消火器をかけるという油を扱う現場にしては不適切な対応ばかりしている。この火災の被災具合がまるで都市計画の計画区域の図面のようであるし、まるで地上げ屋の放火を誤魔化す手助けをしているようにしか見えない。地元の経済ジャーナルの報道によると、前回と今回の火災の区域に隣接するパーキング敷地では旦過市場再開発に絡むトラブルがあったとされる。

その一方で、そこまでして土地取得するメリットは薄いのである。北九州市は衰退しているので、もっと小倉駅に近い利便性の良いところでもビル解体後の用途が定まらず、コインパーキングになった空き地が多数ある。何かしら再開発したところでテナントは埋まらないほどに地域産業が緩やかに死に至っているので、駅から遠い旦過市場周辺を焼き払ってまで再開発する必要は無いのである。

ただ、旦過市場は行政からも地域住民からも邪魔な存在だった。都市中心部で主要な道路やモノレールが通る地域に老朽家屋が密集しており、その一部が河川にせり出していた。これは防災上好ましくない状態の放置だった。マスコミの報道では好意的な内容が多いが、実際は地域住民の中でも昔から居住している高齢者向けの店ばかりで、若い世代には食材の扱いが不潔で価格も高いし、足を踏み入れることはあっても物を購入することは無いのが現実だった。ニュースの報道しか見ていない遠くの地域の人たちは偶発的火災だと思っているが、地域住民は放火だと考えている。この地域が今後どのような形で再開発されるか、その事業者の顔ぶれはどうか、これが火災か放火かの答え合わせになるだろう。