めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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「おたからや」FCオーナー問題に思うこと

「おたからや」というブランド品買取店をチェーン展開する会社に加盟店として参加していた元事業者が、運営企業の標榜するスキームの通りに収益が上がらなかったとして提訴するというニュースを見た。似たようなニュースは、値段の高い食パンしか販売しない専門店のチェーン加盟者でもあったと思う。訴訟を起こす権利は法治国家なので否定してはいけないし、それで示される司法の判断も尊重しなければならないのだが、ニュースの内容を見る限り元FCオーナーは加盟店になるうえでの見通しが甘かったのではないだろうか。

開業して店を作ったら安泰ではない。ましてや、古物商は物を手放す者とそれを欲する者がいるから買取りが成立する業種である。その売買行為の規模は社会の景気の動向や地域の経済水準の程度による。新しいものを売買する市場に比べれば、購入者が使用し続けたり死蔵して中古市場に出ないとか、ゴミになって中古品としては使えないといったものを除外した生き残りの物品のうち、販売するだけの需要が見込まれるものを売買するのだから、市場規模としてはたかがしれている。そこに、骨董店や古美術商、既存の質店などから発展した買取り販売店、ネットを介した中古販売業者や、元の持ち主が自分たちの判断で売り買いするネットオークションもある。すでに既存の業者が乱立して市場が飽和しているところに、新しく古物商のFCオーナーを募集する会社が参入して全国展開しても、既存の競合の取り分のわずかな残余を分け合うしかないので一店舗あたりの収益が少なくなるのは目に見えているのである。

そして、古物商が何億円市場なので高収益が見込めると煽るFC運営企業が語る市場規模は誇張である。家庭に死蔵されている「高価なお宝」の中には、購入時には高価ではあるものの中古市場に出す価値がつかないものが、販売当時の価格を基にした中古価格として雑に算定されて、市場規模の数字として独り歩きしている。例えば着物は持て余される典型的な商品である。良い反物を使用したとか、仕立ての手間暇とか、新しく購入するときには購買欲を煽るプレミア感での説明がなされて高価な値付けがされる。実際は、布地自体には大した価値がなかったり、中古衣料品としてはデザインが時代に合わなかったり、そもそも昔の女性の低身長で寸胴体型に仕立てられた着物は今の女性の体型には合わないといった現実がある。だから、元の価格が高価だろうが中古品として需要が見込めず、古物市場には出回らないで死蔵され、古物商の潜在的な市場規模に算定される。

もちろん、売りに来るのは着物だけではなくて、アクセサリーやバッグや時計などもあるわけだが、それを真贋鑑定したうえで状態や年式から買い取り価格をどのように決定するのかという疑問が出てくる。税関の人達は毎日のように海外から持ち込まれる様々な企業の製品から真贋を判定して没収する必要があるが、鑑定できかねることがあって、買取り鑑定を永年手掛けている専門業者の鑑定士が呼ばれて講習をしている。プロの税関職員ですらそうなのに、加盟金を払っただけのその辺のオヤジが、突然変異でも起きたかのように急に中古の有名ブランド品の真贋判定ができて買い取り価格を妥当に出せるようになるわけがないし、短期の講習で急に鑑定眼が身につく訳でもない。ネット経由で画像などを送信して運営本部の鑑定士に判断を仰ぐにしても、商品の情報を伝えるだけの写真の撮影だって気をつかうポイントはいくつもあるだろうし、加盟していきなり順調に買い取りができるとは到底思えないのである。

そして、この種の「おたからや」のような急に全国で展開し出した買取り店は、買取りの看板やチラシ投函は派手に見かけるのだが、物を買い取ってから先の出口としての中古品販売の実像が見えないことが多い。有名な品目の中古品を検索してみても、既存の有名な質店系や専門の中古業者のサイトが上位に出てきて、「おたからや」の販売サイトは出てこない。派手に全国展開して加盟店を増やしている割には意外である。「おたからや」は買取品をネットオークションに出すと標榜しているようだ。それならば、よく売られそうなバッグとか時計のような商品をネットオークションで検索してみると、その中に運営会社の出品者としてのアカウントがあって、どれほど物品を取り扱っているのかとか、出品者評価はどれほどかなどの実像は確認できることになる。加盟店が収益が出ないという主張が本当かどうかは、オークションでの販売実績からある程度真偽は推測できそうである。ただ、ネットオークションは実店舗や店舗専門の販売サイトに比べると落札者とのやり取りや落札価格の予期せぬ低下などの手間やリスクがあり、販売方法としては効率が悪いのではないだろうか。

もちろん、一般向けのプラットフォームを利用したネットオークションではなく、業者専門のセリというか、オークションのようなものなのかもしれない。それならば、買取価格は転売先が競り落とした商品を販売する価格よりも安価ということになる。転売先の価格はバッグでも時計でもいいから、めぼしいブランド品で定点観測的に調べてみれば中古販売のサイトの価格でどれくらいかは把握できる。そこに、本物と確定している品物を実際に売る必要は無しで「おたからや」へ持ち込めば、偽物だと嘘を言って安く買いたたかれたり買い取り拒否でもされなければ、実勢の買取り価格は分かる。買取価格と販売価格の差が「おたからや」と転売先の業者の利益になるわけで、到底中間マージンの取り分が低すぎるならば、FC運営企業の謳う古物商で収益が得られるというスキームは胡散臭いことになる。FC運営企業がオーナー希望者に出す目論見の実情は、こうやって調べて裏取りをある程度することができる。

「おたからや」の元FCオーナーの一部は、ネット上で運営企業の取締役の前歴についてあれこれ書いている。真実ならば社会的にまずい内容で、よほど裏付けを経て確定していないと、あそこまでの内容を書くと企業の風評被害を超える危害を与えかねないことを書いている。そこまで熱心にリサーチするのであれば、当然中古市場の規模とか、出店地域の経済水準や収益見込みや、運営企業が買取品をどう動かして収益化するのかとか、リサーチして納得したうえで契約して加盟したのだろうと思う。そうではなく、単にお金を払えば加盟できるので業者の触れ込みについて実際をろくに調べもせず参入し、結果として本来の自己の能力では出来もしないスキルが沢山求められるがそれを満たすことができずに失敗して、他責的にその原因を運営企業に求めるためにあれこれと企業のゴシップをネットで調べて書き立てているのだが、肝心の「何を買う・誰に売る」が開業の時から成立していなかったことは触れようとしないのであれば、それは元オーナーに問題がある。それは自覚していて耳をふさいでいるのではないだろうか。

古物商がそんなに儲かるならば、別にFCに加盟しなくても勝手に開業すればいいのである。古物商許可証を取り、物を買取るルートを広く確保していて、買取品の真贋判定ができて、店舗やネットオークションに出品できるなら、買い取りから販売までは自分達でできる。買取から販売まで円滑に動いていれば堅実に事業継続できるし、全国の古物商や自営業者はそうしている。よくわからない会社の看板を借りるFC加盟金は必要ないし、その分を店舗運営や顧客へのサービスに還元できる。

時には失敗もするし、成功して生じる取り分を独占することもできる。その道を歩むと決めるのは自己決定の自由であるし、その結果は自己責任である。儲かっているときは自分の取り分だといい気になって、劣勢になると誰のせいだとか、社会が何とかすべきとか言いだすのは見当違いである。