めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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東大前刺傷事件は目立つ結果を欲しがる見栄っ張りの末路

ちょっと前までは大学入試センター試験という名前だったが、昨年からは大学入学共通テストに様変わりして今年の日程第一日目の2022年1月15日、試験会場の一つの東京都文京区にある東京大学前で高校生や70代男性ら3名が刃物で刺される事件が発生したのは既にニュースで報じられている通りである。

加害者は愛知県内の進学数で有名な私立高校の高校二年生で、高速バスで上京後に刺傷事件現場近くの東京メトロ南北線東大前駅や車両内で放火しようとして失敗し、地上に出てたまたま試験会場に向かっていた通行人を刺したのだという。その生徒は東大医学部を志望していたとされるが、私立高校での成績ははっきりしないのだが、どうも学校に取材したと思われるマスコミの情報では中下位だというし、友人への聞き取りでは一二番手で優秀というが、前者のオフィシャルの情報のほうが本当なのだと思う。事件当日の報道ではすでに、昨年から(高校一年生の段階)成績が伸び悩んでいたので犯行に及んだとは報じられていたが、1月18日の報道では、学校の面談で東大医学部は難しいと言われたのが引き金とされている。

この事件をめぐっては、あれこれ評論家やライターがコメントを書いているがどうも的外れであるように思う。受験戦争が悪いとか勉強が全てではないというのは、そもそもが大学入学共通テストは自分の実力で評価されるという最もフェアな方法に挑もうとしている人たちが集まる場なのだから、勉強が全てであるし受験戦争を引き受けてその場に来ている。そういう会場なのである。だから、受験批判は刺された被害者達のことを否定し侮辱しているようであり、結局自分が受けられない東京大学を受験する受験生を刃物で蹴散らそうとした容疑者の少年と同類である。

これから私が書くコメントは厳しい内容なのかもしれないが、この加害者の高校生は目立つ派手な結果ばかり欲しがる見栄っ張りのくせに、それを実現するために自らは何も動こうとせず、都合の悪いことは何でも社会や周囲のせいにする思考を当たり前として生きてきて、その結果として厳しい現実を突きつけられたうえに受験の形でそれが客観的に周囲に分かるように露見してしまう時期が近付いていたために現実逃避で犯行を選んだのだろう。

加害者が通っているような進学校のカリキュラムでは高校二年生までに高校三年分の内容を終えて、残り一年は試験対策を進めていく。だから、高校二年生の段階の面談で東大医学部合格が難しいと言われたということは、翌年の東大受験生が振り分けられるコースへの進級が難しいと宣告されたと言うことであり、客観的に見て東大受験は無理と言い渡されたということである。報道ではそれで「心が折れた」のだというが、それは疑問である。犯行を1年前から計画していたという報道からすると、結局計画を実行しているわけだが、その間に勉強の不足分を埋めるのは勉強だと堅実な取り組みをした訳では無いから結果が出ていないのだし、医学部に進学するには学力不足以上に入学を厳しくする刑事事件を起こしているあたりからも、正直心が折れるほどの進学への本気度が伺えないのである。

追い詰められたとすれば、受験のプレッシャーというよりは「見栄が張れる」タイムリミットが近付いていた、それくらいだろう。これまでは東大志望とか医学部志望とか言っておけば周囲はちやほやしてくれたが、合否が判定される時期になると本当に東大や医学部を受験できる人たちや合格できそうな人たちは誰かというのは模試の成績などで大体見えてくる。もちろん、試験を経て合否がはっきりする。この事件の加害者の場合は、それがまず翌年の高校三年生の進級先の振り分けがそれに該当する。学力に不相応な志望校なのだから、そもそも合否判定の俎上に上がれない。合否の戦いはこの加害者の少年など全く相手にされない世界で行われる。それでおいて、受験で精神的に追い詰められるも何もないのである。受験の戦いの場にいないからである。

この事件は加害者の少年を擁護する要素が全くない。最近よくある、自分が死のうとしていたと称して実際はそうせずに他人を巻き込むタイプの犯罪、他人に危害を加えて持っている物や立場や属性を破壊したり奪ったりして相手に損失を与えて困っている様子を見て悦に入るような不快な犯罪の類であり、成人の犯罪と同等に厳しく罰するべきである。東大志望を称するのであれば、その卒業者たちが動かす社会の刑罰もきちんと受け入れなければならない。

その一方で、学校名がすぐに分かるような制服を着て目立つような犯行を犯している点や、学力に不相応な東大医学部を志望していた辺りに、何か学校でのトラブルのようなものがあったのではないかと推察されるものがある。平日日中に学校の制服で長距離交通機関に乗っていれば目立つから私服を着て移動して犯行前に制服に着替えたと考えられる。加害者の通学先の高校は圧倒的に東海地区の医学部への進学数が多い中でその地区からはずれた地区、よりによってあまり進学者のいない東大医学部を志望していたというのも、同級生を避けつつ上位に立たなければならない事情があったのではないかと思わせる。

事件は捜査中であり、少年は黙秘に転じているという。加害者の通学先の高校も不都合なことを暴かれると医学部受験時の身元チェックでrejectされてしまうから、学校内の不祥事は必死で隠蔽するだろう。ただ、事件の本当の動機がそのあたりにあるように思えてならない。