めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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ハンガリー医学部留学への本音

URL移転前のブログでハンガリー医学部留学の斡旋業者やそれを利用する者について思うことを書いた。結構書いてから時間が経っているのだが、未だにアクセスが多い。

このトピックについては、Youtuberのドラゴン細井先生という方が似たような題名で取材をしたようである。この方のTwitterを拝見していると、検索してもポジティブな記事しか出てこないので業者が対策しているのではという指摘や、(悪い面を指摘することで)訴訟されるかも、といったことも書いておられる。

実際、業者があちこちに手配しているのだろう。検索をすると富裕層が読者ターゲットの経済誌系のwebメディアに、提灯記事というか記事広告としか思えないような題名と東欧の医学部留学を一押しする(他の地域の医学部は選択肢に入らない)内容のものが次々出てくる。出稿時期は新年度スタートで受験生に精神的余裕のある春先ではなく、ある程度先の見通しがつき始めて現実を突きつけられた受験後半戦の時期が多いのが特徴なのは以前も述べたとおりである。日本国内の大学入試では相手にされない富裕層の落ちこぼれをターゲットにしているので、「簡単に医学部に入学できる」とか、「最近の受験生の選択が増えている」といった、富裕層向けのメディアの割には安易な題名のものが多く、ことごとく東欧の医学部留学を絶賛する結論になっている。勉強しない受験生に正々堂々ガチの受験をしろとは諭さないし、日本の医療や医学教育を貶す内容なのに、卒業後はその批判対象の日本の医師国家試験を受験できることを留学の売りにしていたり、大手メディアの記事のような形で記載されていて「記事広告」とは明記していないが実質広告のような役割を果たすようなものがほとんどである。

そこまでして出稿するからには、やはり一定の効果があるのだと思う。一つは留学業者の宣伝になる。もう一つは、受験生やその親に自分たちの立場を自己正当化させつつ留学を思い切らせるという効果がある。

立場の自己正当化とは、自己評価ができないことや現状を直視し把握して反省したり今後の改善に生かすことなく、身勝手あるいは見栄っ張りを押し通すことである。日本の医学部、すなわち日本の医療のレベルや医師に要求される資質として、学力や人間性や精神面で到底及第しないという現実を日本の大学受験で突きつけられたにもかかわらず、自分だけは安易な方法でも何でも用いて医学部と名の付くところに入り込みたいという、受診する患者の側のことは到底考えていない発想。業者にお金を出して丸投げするだけで、それらから現実逃避でき解決が手に入ると考えている。先送りすれば後から負債が一気に雪崩を起こすことは大学受験の時に思い知ったはずなのに、まだそう考えているのである。東欧の教育で患者本位の医療だの綺麗ごとを言う前に、まず自らを省みるべきである。

正直、ハンガリー医学部の記事を見ているとどう見ても記事広告なのにそう明記していないのが気に入らないほかに、執筆者が気に入らない。日本の有名大学医学部卒だったり、いい加減な受験情報ばかりネットメディアで書いている自称受験コンサルだったりする。もちろん、彼らは一切ハンガリー医学部留学していない。医学部出身者の留学先は西欧なりアメリカなりが多く、東欧はまず選択の視野にすら入らない。絶賛記事を書いている日本の医学部卒業者は受験生の時分に日本の最高峰の大学と東欧の大学を二択迫られたら、東欧の大学など選択すらしなかっただろう。自分の子供が受験生だったとしても、みっともないと反対するだろう。要するに、「自分はやりませんし、皆さんはやってください」というスタンスである。仮に、母校の大学とハンガリー医学部では母校は劣っているかと聞かれたら否定するだろうし、本当に日本の医学教育がだめならば出身校とか元の肩書など可能な限り伏せて恥ずかしいと反省するだろう。経済負担でも、医学部の学費は国公立大学の一般学部と同じで、ハンガリー医学部の年間学費約2年分で卒業でき、為替の影響を受けることも無い。

何より、「まともな人たち」にとって東欧の大学への留学が選択肢に入らないのは、東欧の医療はレベルが高いとは言えないからである。

医療機器や医療資材は海外メーカー製が多く、薬剤も原薬の多くは海外の工場で生産している。輸入するという条件は日本もハンガリーも同じであり、ハンガリーでも日本と同程度の価格で購入すると思ってよい。それらの医療資源を用いる医療者のレベルが仮に同等だとすると、大体標準の治療法や術式は世界的に体格差などを除くと同じであるから、投入される医療資源の額が用いる医療手段のレベルを左右する。それを人口で割ると、住民のアクセスできる医療のレベルになる。ちなみに日本の医療は例年年間予算が40兆円前後で推移しており、その辺の病院にCTスキャンMRIが普通に稼働している。最近分かりやすい例があった。コロナウィルスのワクチン確保で、ハンガリーは先進国がキャンセルしたアストラゼネカ製をメインにかき集めたのではなかったか。これがハンガリーの国力の程度や医療の程度である。日本ではファイザーやモデルナのワクチンをいち早く買い付けて全人口接種できるよう手配したうえに、キャンセルしたアストラゼネカ製を台湾に融通できたのである。

医療レベルの差など、少し考えれば、というより考えなくても目の前のニュースを見れば単純計算で分かる話である。その計算ができないから大学入試で不合格になるわけだが、自分達を不合格にした日本の大学の医学部や医学教育や医療体制をレベルが低いと貶す記事を見て溜飲を下げて勝った気分でハンガリーに行く一方で、卒後はしっかり日本に戻って来て日本の医師国家試験を受験して日本の医療体制に入り込もうとしているのだから、ある意味世界規模のお笑いを見ている気分になる。