ラーメンは嫌いで蕎麦屋に行く。店内製麺の蕎麦チェーンが増えている。昔から店内で製麺していたゆで太郎や蕎麦粉から作っている嵯峨谷の他、富士そばも生地を業者に納入させて店内で製麺機から作っている店舗がある。
実は製麺所から納入してもらうよりコストがかからないほか、製麺所からの配送ルートがない地域でも日持ちのする粉の形態で配送することで出店出来るし、粉の配合だけ決めておけばアルバイト店員でも製麺できる割に、店内製麺という付加価値がつく。
立ち食い蕎麦店に完璧なところはない。麺が良くても出汁はいまいちだったり、あれこれ追求していくと普通の蕎麦屋の方が余程美味しいし値段も同じくらいになる。すぐに出るとか、変なこだわりが無くてもいいとか、独特の茹で麺や出汁の蕎麦じゃない感にかえって付加価値がある。
そういった立ち食い蕎麦屋でも近年は生麺や出汁にこだわるようになって多少は良いものが出るようになっている。その中で、梅もとチェーンだけは別格である。今時各社とも麺も出汁もマシになっている中で、薄めた醤油みたいな味しかしない出汁と新聞紙みたいな風味の縮れた麺や味のない海苔を出している。ちゃんとしたものの方がかえってその辺で安価に調達できるだろうに、その味にこだわることで一層コストがかかっていそうだ。
梅もとは弁当部門を他社に売り、数年前には本体もちよだ鮨グループの傘下になっている。同じグループのそば新は麺を選べるようになっている。メニューの一部は共有している様だし、今後マシになるのだろうか。
梅もとといえば代々木ゼミナールである。資本関係は無い筈だが、校舎内に店舗があった。麺は代々木ライブラリーの横の古くからある教室棟、丼物を扱うプレハブ店舗が主に講義を行っていた建物の中庭にあった。中庭には他にもル・ギジュローという証明写真を撮影するスタジオもあった。
今は代々木ゼミナールは新宿寄りの高層ビルに移転して、その辺りはことごとく解体されてしまった。創設者の高宮行男氏も亡くなられて、ひところの勢いが無くなったように見える。代ゼミ凋落の一因は梅もとの蕎麦ではないかと思う。