めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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さようなら、青砥そば

京成青砥駅のぼりホームの「青砥そば」が2020年4月末をもって閉店していたことをネットニュースの記事で知った。

京成電鉄京成本線は上野方面からの本線と都営浅草線押上線青砥駅で合流し、次の高砂駅成田市方面の本線と北総公団線に分岐する。ちょうど、この二駅間は複々線になっていてもっとも旅客数が多い区間となっている。その路線の上野方面の上りホームの千葉側にプレハブで冷暖房設備もない物置のような小さな建物が建っており、そこが青砥そばの店舗だった。特にチェーン系でもないようで、店員は細身で長身の年配男性か男性と同世代の女性で、客が来るまでは椅子に座るわけでもなく厨房の冷蔵庫やガスレンジの合間の隙間のところにもたれかかって立って待機していた。

麺は今どき珍しくなりつつあるゆで麺で、テボに入れてお湯でさっと加熱してからツユをかけて提供というスタイルである。青砥そばの蕎麦は、駅そばならではの視点で考え抜かれたスタイルを随所に感じるものだった。すぐ提供できる形式に加え、提供量は少なめではあるが、この量が電車を降りて乗り換えまでの3-4分程度で食べきれる適量だった。そして、塩味と出汁が効いて短時間で飲み干せるくらい適温のツユが少ないながらも食べた感を持てるものだった。このツユが好きで、京成線沿線に通勤していた時に毎週のように食べていた。

京成線沿線の通勤も今年2020年の3月末で終わった。勤務最終日、退勤して途中でほぼ義務感のように寄らなければとちょうど目的地行きの電車に乗っていたが無理やり青砥駅で降りて、ホームの青砥そばに立ち寄った。

無理やり立ち寄ったのは、何となくこれが最後だと思っていたからである。それは、私の通勤の導線から京成本線が外れるので滅多に行かなくなるというのもあるし、青砥そばのプレハブ店舗がかなり古くなっていて建て替えか立ち退きが近そうだったこと、京成の駅ではホーム上にもコンビニがあって競合しているうえに利益の薄い独立系店舗が建て替えを選択しそうにないこと、そのころから深刻になっていたコロナウイルス騒動で空港方面からの客が減っていることなどあったからだ。

いつもの男性が調理し、蕎麦はいつもの味だった。そして、いつものように食べ終わってタイミングよく電車が到着して、こうして私の最終勤務日が終わった。

結局その後すぐに閉店しているわけで、あっけない最期だったと思う。青砥そばが無くなって、京成の駅のホームで営業している蕎麦店は高砂駅下りホーム階段下の都そばくらいだと思う。こちらも狭小なスペースで工夫して運営されている。都そばは麺は量が多めで味のほうも少し美味しいが、ツユの味の深みが物足りないので青砥そばのほうが好きだった。都そばは関西で一大展開しているチェーン店なのでいきなり無くなることはないと思うが、駅のホームで立ち食いというスタイルが今どきは古いのかもしれない。

青砥そばの出していた蕎麦や固いかき揚げなどの料理写真や店舗外観の写真はレビューサイトやtwitterに多数残っている。だが、肝心の味や感じる雰囲気は画像や文章では残らないのが残念である。コロナ不況を節目に閉店した飲食店も同じようなものだろう。何十年もかけて築いてきた店内の雰囲気や、熟練した味がこの春に沢山消えてしまった。