めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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都筑区山口医院ステロイド中国人問題を今更

横浜市都筑区は港北ニュータウンが区として独立したに等しい場所である。その都筑区の地下鉄駅に近いこぎれいな住宅が整然と並ぶ新興住宅地の一角に山口医院という内科の診療所があった。こんな風景は日本のあちこちにあるだろうが、この山口医院は普通の診療所とは違った。アトピーの患者の出入りが多かったのである。アトピーの治療で一般の医療機関ではステロイド製剤を選択する。そのステロイドに恐怖心を抱いている患者が山口医院では漢方を配合したクリームを出しているといううわさを聞いて受診していたのである。

山口医院には蘇川博という名前の中国人がいて、中国の古代王朝から伝わるという配合に基づき、自ら山岳地帯に材料を採取に行き漢方クリームを調合しているという触れ込みだった。そして、使用すると症状が改善するというのでステロイドに恐怖心を抱くアトピー患者は好感を抱いていたのである。

中国の有名大学学長の父と新聞社社長の母の間に生まれ、自身も有名大学の医学部を卒業したという中国人医師を名乗る蘇川博。なぜか日本の厚生労働省の医籍登録データベースを検索してもその名前は出てこない。本当に医師なのか。この経歴不明な点を訝る声は以前からあった。そして、好評だった漢方クリームも2ch掲示板ではステロイドを使っているのではないかという噂をする者がいた。もっとも、人気者にはやっかみや足を引っ張る勢力が多少なりともいておかしくはない。

ところが、結局のところ山口医院から処方された漢方クリームを成分分析したところ、クリームには漢方は入っておらず、むしろステロイドが過剰量含有されているという判定がされたのである。そして、処方していた蘇川博が日本の法律で医療行為を認められた医師ではなかったことも判明したのだった。漢方クリームは販売のために会社が設立されており、これも薬事法上問題がありそうなうえに、利益の9割近くが蘇川博側に渡っており返金や賠償が不可能だとして山口医院は破産申し立てしてしまった。肝心の蘇川博は騒動について釈明すると当初は主張しながらも結局逃亡のための時間稼ぎだったようで、結局は中国に関係者が設立する大学の教授に就任すると称して出国してしまった。もちろん、そんな大学は存在していなかった。

この事件、被害者が可哀そうだと全く思えない要素に満ち溢れている。

例えば、経歴不明な中国人を長年にわたって雇用し続けて医療行為をさせた山口医院は完璧な落ち度がある。今のようなインターネットの時代と違って、少し前までは確かに海外の学府の詳細などは確かめにくい面はあった。ましてや英語ではない言語だと検証のハードルは上がるだろう。だが、日本で医療行為をするには日本の医師国家試験に合格したうえで厚生労働省の医籍に登録するという要件を満たす必要がある。だから、日本の医師免許や医籍登録の証明書を提示させればよかった話であり、それを何年も怠ったのはむしろ偽物と分かっていて医療行為をさせたのではないかという疑念を抱かせる。ましてや、中国国内のトップクラスの人間で、しかも古代王朝伝承の薬剤の調合ができるなどと称する人物が、なぜ都筑区の個人医院にやって来るのかということもおかしいと思うべきだろう。

また、一番の被害者であるはずの患者側も愚かすぎる。もちろん、山口医院と蘇川博を批判している勢力は一定数存在している。だが、その声をかき消すかのように、彼らを擁護する勢力がネットでしきりに情報発信している。「蘇川博に感謝する患者会」なるものがあり、今は大半の内容を消去してしまったが、蘇川博に戻ってきてほしいが世論が厳しく追及したせいで出てこれないとか、ステロイドは一般の治療でも使われるので含まれていても問題ないとか、無茶苦茶な内容で埋め尽くされていた。その派生なのか現存するブログでも蘇川博のおかげであらゆる病気が治ったという体験談が書かれている。

ステロイドが嫌で漢方クリームなるものを選んだはずなのに、事件発覚後は一転してステロイドを擁護するというのは矛盾している。それならば蘇川博でなくても一般の診療所を受診すれば何の文句も無いはずだ。山口医院の破産時の債権者集会で成分検証のために問題のクリームを保管しているという話が出たところ、そのクリームをよこせと怒号が飛んだという。問題ある成分だから法人が破産に至ったのであり、それを使わせるわけがないだろう。自己責任でステロイドを過剰含有させたクリームを手作りするしかない。

検索すると出てくる体験談が羅列されたブログの内容を見ていると、中国人・蘇川博があらゆる病気を治して皆感謝しているかのような体験談が書かれている。だが、そこに蘇川博の診療内容を書けば書くほど、どのような無資格診療をしていたのかが決定的になってしまうので、感謝どころか無資格で何でもやっていたという証拠をネットに残して摘発への追い込みをかけているように見える。

感謝する会は、本当に悪いのは山口医院で事件発覚後に蘇川博だけ悪いことにして切り捨てたかのような主張をしていた。だが、無資格診療をしている限り、関係者からの疑問に答えることなく逃げ続けている限りは山口医院が無資格の詐欺師に詐欺の狩場として利用されて切り捨てられたという構図が成立しており、山口医院は被害者の側と事実認定されることだろう。

なぜか、感謝するブログでは無資格診療への怒りや疑問は意図的なのか言及していない。ましてや彼らが嫌っていたステロイドを過剰に投与されていたのに、そのこともスルーしている。それゆえ、ネットに書かれている蘇川博擁護を見ていると、被害者は頭がおかしい集団なのではないかと疑いたくなる。勿論、さらに穿った見方も可能だ。このネットで多数を占めている蘇川博擁護は全体の中のごく少数が自作自演まがいに書いていて、目的は山口医院や蘇川博が訴えられないように状況証拠づくりとして「関係者は感謝していて被害はない」という構図を作り出そうとしているという可能性だ。つまり、蘇川博といまだに繋がっている関係者がいるということだ。

蘇川博には著書がある。絶版になっていないならば、印税は今もどこかに送金されているだろう。送金先は国内かもしれない。案外、名前を変えて再度個人医院に入り込んで、同じような手口で大儲けしようと機会をうかがっているかもしれない。皆、事件のことはとっくに忘れてしまっただろう。