めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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巨大テーマパーク

北朝鮮は実は巨大なテーマパークであることに気づいた。夢の国をコンセプトにしたデズニイランドに対抗して、北朝鮮の国全体が地獄をコンセプトにした巨大テーマパークになっているのだ。そのため、金マサオ君は偽造パスポートで家族を連れて親子連れのフリをして世界各地のデズニイランドに視察に出かけて、テーマパーク経営のノウハウと演出のテクニックを学びとって来るのだ。そして、地獄の度合いが一段と増してリアルさに磨きがかかる。
北朝鮮で客が息をのむ最大のアトラクションは食べ物(例えばキムチ)をその辺に放置しておくとミッキイマウスの実物がつまみ食いに来る。追い払うと穴の中に逃げる。中を覗くとミニイが子供の世話をしている。しかし、彼らも食料不足の影響か幾分痩せてみえる。さすが地獄である。
この国の鉄道は世界最大級の規模の絶叫マシーンだ。満員ですし詰め状態で圧死寸前の人。溢れて屋根に乗る人。架線に当たれば感電して死んでしまう。しかも線路は物資と整備が不足して、車両が揺れまくりで体を張ったスリルが味わえる。また、北朝鮮は道路は未整備地域が多く、舗装率も低い。車もトラックの荷台くらいしか乗るところがない。そもそも、この国の自動車に乗用車という言葉はない。地獄は針の山も火の山も徒歩で越える場所なのだから。従って、車での通行自体が大冒険なのだ。
また、国のあちこちには「アメリカ帝国主義者」達の人工衛星の目を逃れるための地下要塞がある。地下発電所や地下倉庫に蓄えられた豊富な物資、漫画のように地下滑走路から発進する戦闘機は見ものだ。首都にも地下通路があり、北朝鮮将軍様はそこを移動する。神出鬼没伝説の元だ。こうして客に見えないところに豊かな物を隠し、おぞましい地獄の演出に精を出すのだ。
北朝鮮の風景はハゲ山が多く、木をほとんど見ない。畑の作物も育ちが悪くて、トウモロコシは鳥のエサにすら使えなさそうだ。さすが地獄を忠実に模したセットだ。エキストラの演技も光っている。酷使される農民、乞食のような子供たちといった典型的な光景ですらもいい加減な演技はしない。本当に圧政が敷かれた地獄国家の政治を見るようだ。また、死んだように川に浮かぶ人もいる。体を張った体当たりの演技に思わず涙が頬を伝わる。闇市もリアルに出来ている。日本では百円店で当たり前に売っている物も彼らは一生入手出来ないことだろう。さらには飢え死に寸前のように道端で動かない人までいる凝りようだ。そのような人達を配置する街は汚く、塵っぽい澱んだ空気で、暗く霞んで見える。そう見えるのは、地獄には希望がないからかもしれない。演技とはいえ、ここまですさんだ国は絶対に存在し得ない。
そして、夜は楽しいお化け屋敷が待っている。北朝鮮首脳部から観光客への特別の計らいで電気の供給を絶って国中がお化け屋敷になるのだ。別段贅沢な仕掛けを施しているわけではないのに、リアルな暗さが恐怖をかきたてる。暗闇の中では昼間のような乞食のような人たちが見える人がいるはずもないのに待機して演技に努めている。人々の苦しみを凝縮したような地獄にもなお怨念などという物を持つ者がいるのだろうか、と疑問を持ちながらも参ってしまう演出だ。
スリルを楽しんだ後は楽しいお食事が待っている。さすが地獄の料理の再現だけあって出てくるものがすごい。どれも色がくすんで見えて、まるで生ゴミ下呂を吐いたような料理ばかりだ。日本ではホームレスも食べない代物だろう。見ているだけで世をはかなんで死にたくなる。これを食うくらいならドッグフードを食った方がましだ。戦争中の日本のカエルやら雑穀やらの珍料理のほうが格段に豊かに見える。
楽しい思い出を胸にホテルの部屋に帰る。電話をかけようと思ったが、盗聴されるのでやめよう。盗聴の犯人はデズニイのスパイだろう。あまりの完璧さに焦って巻き返しを図りたいのだ。ここは地獄というコンセプトを実現し尽くした理想の地、地上の楽園なのだ。しかし、地獄を地獄と言ってはいけないのが北朝鮮最大のルールだ。控えめにしないといけないのだ。ベッドに横になる。日本の人達はなんでこんなに最高の遊園地を口汚く批判するんだろう。一度来てみたら最高ってわかるのに。

神様将軍様、目が覚めてもこの地獄が無くなっていませんように。(C)2006