めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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集団訴訟ポータルサイトに思ったこと

先日、ネットニュースを見ていたら出資詐欺に対して出資額が少額で訴訟費用の出せない者が集団訴訟を行うためのポータルサイトが出来たという記事があった。利用するのは個人の自由で勝手である。それはそれとして、集団訴訟を取りまとめるサイトができたというネット記事を見て私が思ったことを書いていこうと思う。

現在は、低金利政策のあおりで通常の銀行が融資をしても収益が得られない時代である。ある意味で借り手には有利だ。高配当が得られるとか元本保証とか如何にも確実に収益が得られるような強気の触れ込みで資金を募集している企業が、まともな金融機関から資金調達せずに、不特定多数の一般市民に広告費をかけて資本誘致する必要がない。日本ではそういった企業は出資法違反である。海外なら法的にはセーフかもしれないが、そもそも言葉もわからない国の得体のしれない企業の儲け話を信用して、周囲の忠告や胡散臭いという警戒心を乗り越えて投資する理由があったら教えてほしいものである。

つまり、金融機関でもないのにそれらしい商号を掲げて、高配当が得られるスキームを謳って不特定多数の一般市民から出資を募る企業はまず騙す意図があると思ってよい。そういった企業は次々と無尽蔵に出資者を募集して、先行者への配当に後発者の投資資金を充当する、いわば蛸配当のような形で配当する。あたかも利益が発生してそれを分配しているかのようなシチュエーションを演出し、お試しで出資した先行投資者がさらなる資金を投資するように仕向けたり、仲間を誘ってくるのを待っている。こういった手法は会員の募集が停滞しだすと資金が枯渇しだす。当然、それは配当の遅れになる。配当が遅れだして出資者が気付いたころには悪徳企業には資金がすでに無いか、資金隠しを行って逃げる準備を万端に整えている。

この種の企業が社会問題化して、投資や法律へのリテラシーの低い層、つまり自分で訴訟を起こすほどの能力がなくて集団訴訟を当てにしている層が夢から覚めて騒ぎ出す頃には悪徳企業には返還する資金が残っていないことがほとんどである。悪徳企業の被害を食い止めるには、まず投資スキームを信用しないことだ。正常な金融機関から正常な融資を受けられない理由について掘り下げるべきなのである。そして、出資してしまったのであればさっさと冷静になって解約することだ。その時期が遅くなって配当が遅れだしたのであれば、さっさと独自に訴訟を起こして返金まで粘ることだ。

集団訴訟はこの場合は推奨されない。第一に悪徳企業にほとんど資本が残っていないのであるから、一人当たりの取り分は小さくなる。また、その状況でも参加者は全員その企業の被害者なのであるから、ある意味で仲間は全員競争相手になる。存在する金額に対して、求められる金額が過剰になっている状態である。本来ならば周囲を出し抜いてでも返金されなければならないところで、出資額も投資機関も異なる者同士の利害は簡単には一致しない。しかも、投資や法律へのリテラシーが低いので、「返金すべき」とは叫べても返金のための具体的方策は持ち合わせていないことだろう。下手すれば集団訴訟に参加すれば自動的に返金されるとでも思っているかもしれない。集団訴訟は費用が掛かることすらも知らないかもしれないのである。要するに、個人訴訟よりは主体性に欠ける。

つまり、投資詐欺に対する集団訴訟サイトは参加するメリットが薄いといえる。参加者の質の問題は運営団体や関与する弁護士が尽力すれば何とかなるのかもしれないが、肝心の悪徳企業の資金量の問題は運営団体は保証できないためである。これまで露見した大型の投資詐欺事件で著明な弁護士が尽力してもそれほどの額が被害者に返還できなかったのに、なぜ自分が被害にあった社会的にマイナーな得体のしれない企業から万全に返金されると信じられるのだろうか。こういったサイトのニュースを見て希望を見出している被害者連中は、よくよく考えてみてほしいのである。

安易な儲け話に飛びつく者は、様々な悪人から餌食にされる。そして、親切な人たちに囲まれている幸せな幻想を抱きながら、お金や命を少しずつ奪われて、最終的には全てを失ってしまう。

集団訴訟サイトは悪人ではないと思うが、ある意味残酷なシステムである。被害者の返還額は少ないという現実は被害者に伝わりにくい一方で、法律職にはしっかり収益が入ってくる仕組みになっている。弁護士やパラリーガル職に仕事を与えられるので、経済的に厳しいとされる法律職の新規参入者にはありがたいのかもしれない。しかし、安易な儲け話で幻想を抱き、今度は集団訴訟で安易な返金の幻想を抱いている被害者からすれば、また騙されたという感情を引き起こすだろう。