めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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ハンガリー医学部留学者の闇

もう十何年も前からある、ハンガリーチェコなどの医学部への留学を斡旋する業者について思うことを先日書いた。断っておくが、別に留学業者それ自体が悪だとは思わない。元々受験生が海外志向だったらば、難しい諸手続きをブローカーとして業者が代行してくれて審査の通しやすさなどの攻略も心得ているから、魅力的な方法ではあると思う。海外で問題が生じた場合でも母国語でやりとりできる窓口になるから、不安は和らぐだろう。

しかし、現実にはハンガリー医学部留学の業者の利用者はあまりに「内向き志向」である。

最初から海外で国際的に活躍したいのであれば、日本の医師国家試験ルートなど気にせず出ていくだろうから、ハンガリーチェコにこだわる必要はない。ところが、ハンガリー医学部留学の利用者はネガティブな消去法的選択肢でハンガリー行きを選択している。日本の医学部受験を回避して医師国家試験受験目的で海外大学を迂回するに過ぎず、ハンガリー医学部留学しても日本の医師国家試験の予備試験審査に不適合になるようなところだったら留学しなかったと思われる。かえって、ハンガリー医学部留学者よりも日本の医学部出身者のほうが余程積極的に海外志向で、ハンガリー医学部留学で卒後に海外で現地残留して引き続き現地の人のために臨床や研究していく選択肢に道を見出す者の数より、日本の医学部を卒業後に海外の医療や研究活動に出ていく数や率のほうが余程高いのではないだろうか。

日本の大学は医学部含め、理系大学なら英語論文で国際競争下にある。海外から学びに来る者もいるし、海外の医学部を出た現地人が日本に留学してきて日本の医師国家試験を受験したり、医師として活動できるわけでもないのに何年も研究だけしているという例もある。なにせ国民皆保険制度で医療予算が年間40兆円近いので、全国からまんべんなく症例が集まるし各所に高度な医療機器が配備されている。日本の医学部は国際化の真っ只中にいて、留学はその中の選択肢の一つに過ぎない。留学するにしても国費で行く道もある。日本の医学部に学部の段階から外国人で入学してくる者はほとんどいないが、国内の需要の為の専門職養成という観点からすれば国内に人員が定着するのは悪い傾向ではないし、座学にせよ技術習得にせよすんなりカリキュラムが頭に入る母国語で履修したほうが余程効率が良い。

記事広告みたいに同じような方向性のネット記事はハンガリー医学部は簡単に入れるという触れ込みだが、これも懐疑的である。医学は国際的に英語論文や学会で討議されて、診断基準も治療法もほぼ全世界で同じであり、言語は違えどそれを運用する者のレベルも大きく変わらないはずなのである。それこそ、笑えないオチがあるのではないだろうか。例えば、途上国の外貨獲得で卒業後に他国に行って自国の医療体制には何ら影響を及ぼさない留学生を受け入れるコースがあるとか、裏では優秀層しか入学できない自国民出身者のコースがあるといったことである。思いつきで言ったオチだが、そういった現地人コースが本当にあるとすれば、留学生コースは養分である。留年しようが退学しようがお金は大学に入り現地人学生の福利厚生に回る。現地人と留学生でコースが分かれている場合、留学者がそのまま現地残留で臨床や研究の継続を大多数が希望するようになったら、自国の医療のレベルが下がらないように入学に必要な学力のハードルも上がってハンガリー医学部の本当の姿を現してくるだろう。

ハンガリー医学部留学ではかなりの在学者が留年して中退する。日本の医学部では多少留年者は出ても、まず中退までは行かない。別に不正はしていない。彼らはアタマは悪くないからそうなるのだ。もともと受験生のポテンシャルが高いのでどこかで立ち直れるし、試験対策も慣れているし、卒業までの学校や同学年でのサポートもしっかりしている。だから、彼らのほとんどは卒業まで行くし、その後も紆余曲折しようが医師免許は取得出来て医師になっている。すべては医学部合格者はアタマいいから何とかなる理論であり、ある意味合理的ある。現に、上記の何とか卒業して医師になった人たちのパフォーマンスは決して低くない。各所で活躍していて、それはその辺で当たり前のように目にしているはずである。聞こえの良いことや見た目は追求していなくても、学ぶことは学び(卒後も引き続き)、身に着けているのである。

これがぬるま湯だ、日本の大学は入るまでが難しく欧米は逆だという主張があるが、見当外れに思える。海外の場合、大学進学までの教育が困難な地域が多いのだ。日本の学校の教員は大学卒業者しかなれないが、海外では高等教育を経ないで教師をする者がざらにいる。その学校すら地域によって質が偏るし、家の周囲が数百キロ畑とか荒地とかそんな地域にも子供はいるのである。国や社会階層の経済レベルの格差がそれに輪をかける。大学進学までの教育の質に根本的に不平等を抱えていて大学で事実上再教育される海外の大学生と、教育の質が概ね均等で恵まれている日本のカリキュラムで履修すべき内容を身に着けず大学受験で散々な結果でハンガリー医学部留学に飛びつく受験生を同列で見るのはおこがましいのではないだろうか。

ハンガリー医学部留学者(とその親)は闇を抱えている。自己中心的、主体性のなさ、中途半端な決意表明、続かないやる気、他者に対する姿勢、挙げだせばきりがない。その闇と向き合い、反省し、改めれば、わざわざ留学しなくてもその辺の医学部に入学できるのである。