他人の名前を持ち出して、自分の利得のために用いる行為の常習者というのがいる。自分はどこそこの偉い人の知り合いだとかコネがあると主張して、本当は何の取柄もないような取るに足らないショボい人物のくせに、自分もその偉い人と同格同等だから同じように優遇して扱えということを要求しているのである。
しかし、そういった要求をしてくる者は、立場がある人物と同じように扱うのに相応しい資質や品格に欠ける。大抵は行動に責任や節度が伴わない。その名前を持ち出している偉い人だったら、立場をかさに着なくても特別扱いを要求しなくても、特に文句は言わないだろうし到底してこないであろう呆れる内容を要求してきたり、要求の内容が過大な割にはそれに対する報酬が出せなかったり、相互的に返礼として何らかの待遇を返せるだけのものを有していない。貸し借りをゼロで維持する関係が築けず、一方的に簒奪するばかりである。
正直、この程度の人物が偉い人の名前を持ち出す行為は、その偉い人に恥をかかせているようにしか見えない。しかも、この種のみっともない要求は当の偉い人の知らないところで行われていることすらある。不当な要求をしている相手だけでなく、名前を持ち出している偉い人に対しても無自覚な行動をしていることになる。
他人の名前を持ち出す行為はとても怖い行為である。
名前を持ち出された者が怒り、報復されたときにそれに耐えられるのだろうか。いまどき暴力団の名前を使って相手を恐喝したり不当要求する行為はたとえ組員を詐称していてもアウトであるが、暴力団に限らず自分たちの立場を持ち出して勝手なふるまいをすることを良く思わない層というのはいる。暴力団並みに極端な例かもしれないが、皇族の名前を持ち出して待遇を引き出すといった例は昨今の報道でもよく見るだろう。
名前を持ち出された側が直接的に報復をしなくても、その周囲がルール違反とみなして、まさに権力をかさにした優遇のようにあちこちに手を回されて社会的に排除されるということは十分予想できる。自分の能力や資力で物事をまかなったりその範囲で満たされることが基本なのに、不相応に他人の名前を持ち出して高待遇を不当に得る者は、行動に責任や節度が無く、相手への配慮も返礼もできないばかりか、事がこじれたときの解決すらできない。
他人の名前を持ち出さないと自分の立場が保てない時点で、どうしようもない奴だと言っているに等しい。私の場合は、他人の名前をかさに着た不当要求は全てはねつけている。今後のトラブル防止のためである。要求を呑んでしまうと面倒ごとが次々起こり疲弊しかねない。断ったことによって名前を持ち出された人物からの報復はされたことが一度もない。所詮はその程度の人物が他人の名前を持ち出すのである。
