めぐろぐ

飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。日常生活の雑多なことを記載していきます。

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新型コロナウイルスが人工物だという主張に思うこと

COVID-19、いわゆる新型コロナウイルスが中国武漢のウイルス研究所から流出した人工物であるという主張をし、中国政府から命を狙われているとアメリカに渡り(亡命かどうかは不明)、アメリカ政府の保護下に置かれていると主張している香港出身の中国人の自称ウイルス研究者の女性・Li Meng Yanなる人物がいる。その人物が新型コロナウイルスが人工物とする主張の論文を発表したと一部メディアが報じている。

まともな医学研究者や科学者は内容が荒唐無稽であるとして相手にしていない。ところが、新型コロナウイルスを政治活動の手段に使いたい勢力がこの人物の主張に飛びついている。大抵が自称の肩書を有り難がって拝むような知的水準が低い連中であるが、反中国の活動のためにSNSで情報を拡散したり、しまいには査読すら通っていないLi Meng Yanの論文を印刷したものをあちこちの機関に郵送しているようだ。

こういった話に飛びつく前に、Li Meng Yanの主張を支持している人たちは、この人物についての一次情報をどれだけ調べているだろうか。ウイルス研究者、命を狙われている、アメリカ政府に保護されている、すべて自称である。よくオカルト超能力番組に自称FBIの超能力捜査をしているという人物が出てくることがあったが、当のFBIが関与を否定しているという笑えないオチがあった。報じられている内容をうのみにする前に、自分でも調べた方が良いのである。

Li Meng Yanなる人物の論文を学術論文を検索できるGoogle scholarで調べてみると、筆頭著者としての原著論文の数が少ないことに気づく。しかも所属先は武漢ではなく香港であり、なぜ香港で武漢のウイルス研究所の内情を知ったことのように語れるのかという疑問が出てくる。

学術業績の面では、2018年までの数年間で論文数本書いた後は今回のCOVID-19の報告の共著者として登場するまで2年間の実績がはっきりしない。しかも、過去の論文もウイルスそのものというよりはウイルスによる身体反応を扱ったようなものであり、ウイルスそのものについての研究者とは言いがたい。研究歴がその程度で分野もずれているのに、武漢肺炎の原因である新型コロナウイルスが中国の武漢ウイルス研究所から拡散した人工物だと言うに足る学識があるとは考え難い。ちょうど、おなじ電気つながりだからといってジャパネットたかたの販売員が超電導のことは詳しく知らないようなものである。

そもそも、人工物だと言えるならば頭の中で妄想している合成手法ではなく、きちんと再現実験で実現しうることを示すべきである。実際に現物を人工的に合成して実験手順として成立すると実証すべきだろう。既にウイルスの遺伝子配列は判明しており、その構造をどのウイルスの遺伝子からパッチワークしたのか。導入はどのプロモーターやエンハンサーなら上手く行くのか。そして、何故数多くのウイルスの中からそのウイルスを選び、その遺伝子を導入しようと考えたのか、それによる毒性の検討はどうであったのか、人工で製造して何に使う目的だったのか、拡散の速度はどの程度と見積もっていたのか、撒いた側が感染しないための方策は何か、そういった疑問が次々出てきても人工物だと言うだけで肝心の情報が見えてこない。

また、身柄をアメリカ政府に保護されていると言う割にはスタンドプレーであちこちに登場して勝手に話し過ぎである。身柄を保護しようにも勝手に危険なところへ出て行って、ヘイトを集めるような発言を次々勝手にしている。セキュリティを自ら無効にしているように思える。アメリカ政府が本当に保護しているのであれば、保護している者の方針に従って、保護を妨害しない形で行動すべきだろうし、本当に護衛のプロがついているのであればそうさせるだろう。コロナウイルスの起源についてはアメリカ政府も調査しているのに、足並みを乱しているようにも見える。

Li Meng Yanの主張はまともな科学者からは相手にされていないが、ゴシップ誌のような三流メディアや一部の政治活動勢力は躍起になって情報拡散しようとしている。そして、この情報を使って中国たたきをしようとしている動きが見える。

うがった見方をすると、中国から世界にウイルス感染症が拡散したことに便乗して、反中国の勢力が中国たたきをする目的で中国の陰謀でウイルス感染が拡大したという主張をするキャラクターを用意したのかもしれない。そのために研究所にいた末端の構成員を動員して、陰謀に加担させられて口封じされるので逃亡して告発をするという名目で反中国のメッセージを世界に拡散させたのではないか、ということである。

たとえば、法輪功は過去にも大使館員に構成員を忍び込ませて赴任先で亡命させ、中国政府の法輪功に対する弾圧を告発する主張をさせて大紀元時報で報じて、メディアで反中国の主張が扱われているという体裁をとる手法をとってきた。この人物の背景がそういった事情を抱えているのであれば、嘘をついてでも中国批判のためにウイルスが人工物だという主張に持っていくだろう。世論はバカだから、論文は査読をされて内容に疑義があれば受け付けられないというシステムは知らないから、でたらめな内容でも論文を発表したと報じたもの勝ちである。発表先のジャーナルも、いわゆる自説に権威をつけるためや掲載料をもらうために作られたそれっぽい学術誌のような体裁の冊子を自分たちの組織で作ってしまえばよいのである。報じているメディアも然りで大紀元時報のような組織の機関紙が報じて、それを報じるネタの無いようなゴシップメディアが又聞きで報じているだけであれば、報道の信憑性は一気に落ちる。

もちろん、そういった組織の使命を帯びているのではなく精神疾患で虚言を弄する、単なる目立ちたいだけの妄想癖の人物かもしれない。iPS守口氏の中国版である。散々パクリ大国だとかコピー天国だと揶揄して、コロナウイルスは人工物だと主張する研究者は本物だというのだろうか。これだって中国名物の偽物かもしれないのである。

軽くLi Meng Yanの主張が荒唐無稽であると考える理由を述べてみた。きちんとしたメディアや科学者が相手にしない理由はここにある。別に、中国の圧力があったとか、医学界の陰謀とか、そういったものではないのである。科学的にあり得ない、それだけである。

そして、由来が中国の武漢のウイルス研究所だろうが何だろうが、現に世界中でウイルスは拡散して流行している。本来であれば、その拡大を防止したり、感染を予防したり、治療して重篤化や死亡を防いだりすることに今の時間や研究所の人員や研究予算は割かれるべきである。

ところが、こういった屑のような論文が出てくると、反論のために科学的に間違いを立証する必要が出てくる。そのために、元からあれこれ感染症があって制圧できていない中で更にCOVID-19の問題が出てきているのに、研究人員や費用が検証に割かれることになるのである。

これではCOVID-19の対策のゴールポストを遠ざからせることになる。

全員PCRの主張をしていた連中のように、このコロナウイルスが人工物であるという主張に飛びついた者がそれを根拠に声高にあれこれと要求をすることで、科学的に合理性のある対策を妨げることになりかねない。ワイドショーなどで大々的に出ている自称専門家などよりも、メディアに目立つようには出てこないが政府の感染対策政策を仕切ってきた専門家のほうが余程効果を生んだのと同じように、目立つだけで本来必要なものの足を引っ張る意味のないものとしてLi Meng Yanの論文が使われていることに注意する必要がある。